ごあいさつ

第22回日本IVF学会学術集会長向田 哲規の写真

第23回
日本IVF学会学術集会長

向田 哲規広島HARTクリニック院長・理事長

日本IVF学会は1997年より、体外受精を中心とした生殖医療に携わる医療従事者の知識・技術の向上と自己研鑽の機会を提供する団体として、毎年の学術講演会を含め様々な活動を行ってきました。

このたび第23回日本IVF学会学術集会を2020年10月31日、11月1日に広島において「新時代のART医療とは~Ultimate ART for New ERA 2020~」というテーマで開催します。2020年は50年ぶりに日本においてスポーツの祭典であるオリンピックが開催され(2021年8月に延期となりました)、時代も平成から令和に代わり1年以上経過し、世の中は予想をはるかに超えたスピードで変化し、想定外の事象が次々起きています。生殖補助医療の分野も科学技術の進歩、それに関連する医療機器の進化に伴って高度でより複雑になっており、治療アプローチも社会構造の変化、患者さんの治療ニーズの変化により個別・細分化が不可欠です。
このような背景から今回の日本IVF学会では、ART医療に携わる医師、看護師、胚培養士、事務部門、心理カウンセリング、医療関係者が知っておくべき関連する医療・基礎科学・メンタルサポートについての講演をプログラムに組み入れています。本年から着床前遺伝子解析(PGT-A)が日本産婦人科学会の主催する臨床研究として、80施設以上(2020年4月時点)の参加で開始され、より多くの症例でPGT-Aが施行されていく状況となっています。その場合、出生前診断の最新の情報とその効率的利用法や妊娠初期の胎児発達で留意すべき点等の知識は生殖医療専門医にとって不可欠です。

臨床エンブリオロジスト学会との共催Workshopでは、「Piezo ICSIの今後の展開と有用性」という題で顕微授精法の革命的進化となりえるPiezo ICSIの可能性について、実際に行っている胚培養士からその経験の紹介と、理論的背景を県立広島大学の堀内名誉教授から御講演頂き、臨床的有用性の議論になることを期待しています。
海外からの講演者としては、Simon Cooke氏がTime Lapse Cinematography(TLC)の膨大な画像情報を、AIを用いて有効に活用する方策に関する講演や、Csaba Pribenzsky氏による、通常は発現していない細胞内の隠れた能力を、気圧を掛けることで引き出そうとする「Stress Preconditioning」という概念の講演などを企画しております。ART施設の責任者が最も気になっている事項であるPGT-A臨床研究について、日本のART医療施設で本格的に行われるようになった臨床研究としてのPGT-Aが10月末の時点でどのような展開になっているか?の情報を立ち上げから日本産婦人科学会とART施設との連絡・調整を行っている桑原先生に講演していただく予定です。多くの医療関係者は患者に状態や治療法を適切に説明し、それを患者が理解することの重要性は痛感していると思いますが、「あれだけ説明したのになぜ?」と当惑した経験は誰しもあると思います。
そして今回の大会の結びには、この最も重要である「説明し理解してもらう」ということに関して、誰が日本において一番上手かを考えたとき、あのジャパネットたかた創業者である髙田明氏から、伝わるコミュニケーション、伝えなければ、ないのと同じという観点から話をして貰いたいと思い、講演依頼を2019年秋から行いました。最初は断られましたが、JSARという団体、不妊治療現場の医療関係者の思いについて何度も説明し、最後は佐世保まで面会するつもり・・・で、遂に何とか快諾を得ました。そして「夢持ち続け日々精進」というテーマで90分、なぜ髙田明が語ると伝わるのか?の極意について講演頂く予定です。

ARTに携わる医療関係者にとって明日から役に立つ情報と将来へ向けての活力を得る学会にすべく鋭意努力しておりますのでご期待ください。

2020年4月21日
第23回 日本IVF学会
学術集会長 向田 哲規